今ではインターネットショップなどで良く目にするようになった佐賀牛ですが、その歴史・ルーツを知る人はそれ程多くはないのではないでしょうか。佐賀牛が誕生するまでには様々な努力と妥協なき志がありました。この記事では、そんな佐賀牛の歴史を辿りながら、佐賀牛についてご紹介していきたいと思います。
佐賀牛歴史の始まり
佐賀牛誕生の始まりは昭和59年と歴史はそれほど古くありません。食肉の飼育が全国的に盛んになり始めた明治初期、佐賀県では乳牛の飼育をメインとしていました。時代の流れに乗るように昭和後半から食肉の飼育を始めるようになったのです。
そして昭和58年、県内の若手飼育農家のグループが肉牛の研究を重ね品質の改良を進めた結果、その年に出荷した牛肉の品質の向上が顕著に表れました。これが現在の佐賀牛の基礎となっているのです。
佐賀県の恵まれた自然
翌年には、佐賀県農業協同組合(現JAさが)から初めて「佐賀牛」を名称とした食肉を出荷します。そこから佐賀牛の名は瞬く間に食肉業界に知れ渡っていくこととなります。
食物が良く育つ肥沃な土地と、名水百選にも選ばれる「清水川」の良質で豊富な水源は、佐賀牛を飼育するにはなくてはならないものです。また当時の佐賀県農業協同組合が独自に配合した統一飼料や稲わらを与え、一頭一頭大事に育てられた和牛はその品質をどんどん伸ばしていったのです。
努力が実った商標登録
その後も努力を惜しまず、全国に佐賀牛を出荷しその名を確実に広めていき、迎えた2000年(平成12年)。とうとうその努力が報われる時が来ます。佐賀牛の名前が商標登録され、ブランド牛「佐賀牛」が誕生しました。
これにより佐賀牛のブランド価値が格段に上がり、その年に行われた沖縄サミットでは佐賀牛を中心とした料理が各国蔵相に振舞われたのです。
昭和59年に佐賀牛が誕生して15年余りで、全国有数のブランド牛が誕生しました。
いち早く取り組んだトレーサビリティ・システム
トレーサビリティ・システムとは生産履歴を明確に掲示するシステムの事です。全ての出荷先へ、飼育者の顔写真を掲載した証明書と、どのように育てられたかの履歴を発行し添付する事で、商品が安心で安全だという仕組みを、平成14年にいち早く取り入れました。
その翌年には佐賀牛を市場で購入した消費者のために専用のホームページを開設し、店頭や購入したパックに表示されている商品識別番号でその内容が分かるようにしたのです。
このトレーサビリティ・システムはその後、多くの生産者が利用する事になります。
佐賀牛の特徴
佐賀牛は佐賀県内で飼育、生産されている肉牛の中で、JAさが(佐賀県農業協同組合)の管轄内で肥育された和牛を指します。佐賀牛として認められる品種は黒毛和種のみで、さらに肉の品質が一定の条件を満たしている必要があります。
佐賀牛としてのブランド付けされる条件は厳しい審査の基準が設けられ、日本食肉格付協会が定めた格付け基準においてA4ランクもしくはB4ランク以上で、なおかつ脂肪の入り度合いを評価したBMSがNO7以上のものしか佐賀牛の名前を用いることができないようになっています。基準以下のもので、その他の基準を満たした黒毛和牛は佐賀和牛として呼ばれることになります。
佐賀牛はその厳しい審査基準からも分かりますが、肉付きの良さ、赤身の繊維の細かさ、そしてキレイな霜降りと脂肪の量がとても多いのが特徴であり、その良質な食肉の中でも特に霜の降りの状態が良いものを「艶サシ」と呼ばれています。
佐賀牛と並び称される伊万里牛の存在
佐賀牛と並び称される伊万里牛は、佐賀県伊万里市で飼育された黒毛和牛のことを言います。豊かな自然と緑豊かなの山々、澄みきった水や空気に包まれた最高の自然環境のなか4で、生産者の優れた飼育技術と手間暇とたっぷりと愛情をかけて飼育した伊万里牛は、肉質が色鮮やかで柔らかく、きめ細やかなのが特徴で、霜降りの入り方も抜群。上品な甘みと風味がたっぷりと感じられます。
伊万里牛のルーツは、佐賀牛と同じように但馬牛にあります。但馬牛は折り紙付きの品質が約束された黒毛和牛です。そんな由緒ある但馬牛の血統を継いだ黒毛和牛が各地で生産され多くのブランド牛が誕生します。
そんな但馬牛が九州でも生産されるようになり、九州内で出生した但馬牛の子孫を佐賀県内で肥育を開始し始めたことから、佐賀牛や佐賀和牛・そして伊万里牛が誕生していくのです。
佐賀牛と伊万里牛の違い
同じ佐賀県内に存在するブランド牛「佐賀牛」と「伊万里牛」ですが、その違いとはどのようなものなのでしょう。
佐賀牛等と伊万里牛の違いが生まれ始めたのは平成19年のJAさが(佐賀県農業協同組合)が発足した頃になります。それまで佐賀牛などのブランド名は佐賀県内で生産、飼育されている黒毛和牛全般に使用できていたのですが、JAさがが発足してからは、佐賀牛はJAさがの管轄内において生産、肥育されている黒毛和牛しか使用できないブランド名となってしまいました。
伊万里地方を管轄しているJA伊万里は、JAさがの発足時、そこに参加をしていなかったのです。そのため現在も伊万里地方はJAさがの管轄外であるという背景があるために、その名称が別のままになっています。ただ伊万里牛は伊万里が誇る特産品の伊万里焼とともに、全国的に知られる伊万里の名産として、認知度の高いブランド牛の1つとなりました。
このような背景から別々の名称が付くようになってしまいましたが、もとは同じ品質を誇る黒毛和牛です。つまり佐賀牛と伊万里牛の品質の違いはありません。伊万里牛のブランドの定義としては、佐賀牛や佐賀和牛の定義と全く同じで、厳しい審査基準を満たしたもののみを伊万里牛、それ以外の基準をクリアしたものを佐賀和牛と呼んでいます。
ブランド牛としての条件が同じで、肉質もほぼ変わらない事から一部では、「伊万里産佐賀牛」や「伊万里産佐賀和牛」のような名称で呼ばれることもあります。
海外でも評価された佐賀牛
日本国内で佐賀牛の評判が高まりつつあった平成19年、JAさがは香港への輸出をスタートさせました。それ以降、海外のレストランや百貨でのPR活動などが功を奏し、着実に輸出量を伸ばしていき、今では香港とマカオに46店舗の佐賀牛取扱店舗を有するまでになりました。
また香港やマカオに続き、アメリカ、シンガポール、タイ、そしてフィリピンと急速に海外への輸出が進んでいきます。そして輸出を開始した平成19年からわずか6年間で3倍以上の輸出量を記録するまでになりました。
佐賀牛は、世界各地の流通関係者やシェフから、日本でもトップクラスの肉質であるとの最高の評価を得ており、日本のみならず海外でも日本を代表するブランド和牛へと成長することになったのです。今後もさらに海外への認知度を高めていくことを目標とし、佐賀牛の素晴らしさを伝えていきたいと考えています。
日本食肉格付協会の肉質等級規格は全国2位
これまで佐賀牛は厳しい基準を満たした黒毛和牛とお伝えしてきました。ところで日本には和牛の格付けを行う「日本食肉格付協会」という機関がある事をご存知でしょうか。
ブランド牛となるには一定の基準をクリアしなければいけません。佐賀牛は他のブランド牛よりも厳しい基準を設けて、その基準を満たしたもののみ佐賀牛のブランド(それ以外は佐賀和牛)として市場に販売されるのです。
日本食肉格付協会とは
日本食肉格付協会とは国内に唯一存在する、食肉に格付をする機関です。牛肉には15区分の等級(A5やA4など)があります。この等級を付けるのが食肉格付協会の格付員になります。食肉の格付は全国統一で設けられた基準があり、洗練された職員の目視で判定を行っていきます。
全国屈指のブランド牛「佐賀牛」
そんな日本食肉格付協会で格付けされるブランド牛は数百にも及びますが、独自で厳しい基準を設けているのが佐賀牛です。
通常であれば肉質の等級は3〜5、またBMS値は5以上のブランド牛が多いのですが、佐賀牛は肉質等級は4以上、さらにBMS値は7以上でなければ佐賀牛のブランドを付けないと定めています。この厳しい基準は仙台牛に次いで全国でも2番目に厳しい基準になります。
つまり私たちが知っている佐賀牛は厳しい基準をクリアした最高品質のブランド牛だという事なのです。
まとめ
この記事では佐賀県が生んだブランド牛「佐賀牛」の歴史や、いち早く取り組んだサービスや佐賀牛のブランドを得るための厳しい格付基準について解説してきました。佐賀牛の名を初めて聞いた方も、その道のりを理解していただけたのではないかと思います。
その歴史はわずか30年と他のブランド牛よりも比較的新しい佐賀牛ですが、若き飼育員の弛まぬ努力が、現在では世界でも認められるブランド牛を誕生させました。妥協しない厳しい基準も、その品質に自信を持っているからこそ出来る業でしょう。
佐賀牛の名をさらに世界に。佐賀牛の歴史はまだ始まったばかりです。