今注目されているブランド牛をご存知でしょうか?それは「鳥取和牛」です。その品質の良さで多くの賞を獲得している、最も勢いのあるブランド牛と言っても過言ではないでしょう。
この記事では、そんな鳥取和牛の特徴や、鳥取和牛の中でもブランド化されている鳥取和牛オレイン55等について解説していきたいと思います。
鳥取が誇るブランド牛「鳥取和牛」とは?
鳥取和牛のブランドは、日本食肉格付協会の厳しい審査において、肉質がA3ランク以上をクリアした黒毛和牛のみが与えられます。また、その中でもオレイン酸という成分を55%以上もった肉質であり、鳥取和牛の始祖と言われる「気高号」の血を引く牛には「鳥取和牛オレイン55」というブランドを与えています。
現在、鳥取和牛の全国への出荷数は全体の0.7%と非常に希少価値が高いブランド牛となっています。その原因として、年間1,900頭前後出荷される鳥取和牛ですが、脂肪の質や肉質などにこだわり、実際販売される数は20%程度、つまり400頭程度しか出荷されません。
そのため、なかなか目にする機会が少ないブランド牛となっていますが、それだけ厳選された高品質の黒毛和牛を出荷しているという事になります。
鳥取和牛の特徴とは?
鳥取県が誇るブランド牛「鳥取和牛」は、雄大な自然の中でストレスなく育てられ、赤身と脂身のバランスが絶妙です。
霜降りの量が多く、しつこさが全くない脂身は、非常に上品で甘いのが特徴です。また、赤身にはコクがあるため、後味もあっさりしており軽やかに感じます。理由は、鳥取和牛には「オレイン酸」を多く含んでいることが挙げられます。
さらに、脂の融点が他の和牛と比べても低いため、脂の口どけが良く、食べた後もさっぱりとしているので、老若男女問わず多くの人にその美味しさを感じて貰うことが出来ます。
飼育に恵まれた環境
最高品質と言われる「鳥取和牛」を作り出すために、欠かせないものの一つが飼育環境です。日本の名峰として知られる「大山」の麓で飼育される「鳥取和牛」は、大山から流れ出すミネラル分を多く含んだ流水と、大自然の澄んだ空気の中で、自由にストレスを掛けず育てられます。
また、飼育農家では、工夫を凝らした独自の飼料を作り出し、その肉質を作り上げるために必要な成分を与えています。さらに、牛が眠る牛舎の衛生管理を徹底するなど、高品質な鳥取和牛を作り出すための配慮を怠ることなく、安心で安全な品質を、食卓に届けるための努力を重ね続けています。
恵まれた大自然と生産者達の努力によって、牛たちはすくすく育ち、最高品質と言われる「鳥取和牛」が作り出されています。
安心安全な鳥取県産牛肉
鳥取県では、BSEや口蹄疫などの家畜伝染病等の対策を、鳥取県の農林水産部畜産課や食品衛生検査所を中心に、生産者も含め一団となって細心の注意を払っています。
・BSEとは?
BSEとはBovine Spongiform Encephalopathy「Bovine=牛」「Spongiform=海綿状」「Encephalopathy=脳疾患」の略です。牛海綿状脳症と言われており、この病気は脳がスポンジ状になり、運動失調や異常行動などの神経症状を起こします。
最悪の場合は死に至ると言われている病気です。異常が激しくなると、牛が狂ったように見えることから狂牛病とも言われています。
・口蹄疫とは?
口蹄疫とは、牛や豚などがかかる伝染病の一種を言います。特徴としては蹄や口に水ぶくれができ、発熱や大量のよだれを流し、食欲が無くなる事もあります。
この病気は非常に強い感染力をもっていますので、一頭が掛かってしまうと、隔離しなければいけないのですが、場合によっては全ての牛や豚を殺処分しなければいけないため、各農場の飼養管理、衛生管理を徹底することが重要になってきます。
鳥取県の取り組み
和牛生産飼育者によって愛情をこめて育てられた和牛は、食肉にするためと畜場へ加工されます。ここで枝肉となるための過程、と殺解体作業を行っていきます。
その後、消費者に安全な食肉を提供するための審査を食肉衛生検査所で行っていきます。ここで、作業工程とと畜検査が衛生的に行われているかのチェックを行います。
食肉生産には「と畜場法」が制定されています。その法に基づき、と畜検査員が1頭1頭厳密なと畜検査を行い、その検査をクリアしたものが食肉として流通していきます。
日本初の和牛の戸籍管理の導入
鳥取県は1919年、それまでの和牛を改良するため「因伯種標準体型」という目標基準を制定しました。また、その翌年には、全国で初となる「和牛の戸籍管理」に着手し、 改良目標や血統登録に基づき、それまでの肉牛の本格的な改良事業を開始します。
牛の戸籍管理には、一頭一頭の識別が必要となります。当時は、背中や頭などの旋毛によって見分けていましたが、1963年には鼻の指紋と言われる、鼻紋により識別する事が可能になったのです。この方法は現在も変わっていません。
日本のブランド和牛の始祖「気高号」の輩出
昭和41年、岡山県で開催された日本国内の和牛日本一を決定する大会「第一回全国和牛能力共進会」で鳥取県産の一頭の和牛がグランプリを獲得しました。その名は「気高号」です。
鳥取県内の和牛に関わる人であれば、知らない人はいないと言われるこの名牛は、大柄で発育状態及び資質全てにおいて優れており、生涯で9,000頭以上の子孫を残すことになります。「気高号」は、鳥取和牛に限らず、現在日本で生産されている有名ブランド牛の始祖としてその名を残しているのです。
隠れた高級ブランドと言われる「鳥取和牛オレイン55」
隠れた高級ブランドと言われる「鳥取和牛」の特徴としては、脂肪に含まれるオレイン酸が非常に高い事が挙げられます。オレイン酸とはオリーブオイル等にも含まれていて、悪玉コレステロールの数値を下げる効果があるとされています。
鳥取県では、鳥取和牛の中でも、オレイン酸が55%以上含まれており、さらに気高号の血統を継ぐ牛を「鳥取和牛オレイン55」と認定する事を決定しました。その肉質の特徴は、口に入れた瞬間の風味と口溶けの良さで、まさに世界最高の品質と言えます。
「鳥取和牛オレイン55」の特徴
鳥取和牛オレイン55は、一頭一頭、食肉脂質測定装置を使用し測定します。測定部位は日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格に定める枝肉の6〜7肋骨間の断面の筋間脂肪です。
牛肉の脂肪中のオレイン酸含有量は、同じ牛であっても部位によって異なることが知られています。
鳥取和牛オレイン55といっても、全ての部位にオレイン酸55%以上の含有量を保証するわけではありません。
●鳥取和牛オレイン55の認定基準
品質 | 鳥取県で飼育された期間が最も長い黒毛和牛 |
格付 | 4等級以上 |
その他の基準 | オレイン酸の含有量が55%以上である気高号との血統である食肉脂質測定装置を使用して測定している枝肉状態で特定部分を測定しているその他基準と合わせて認定である |
オレインとは?
植物油や動物性脂肪などに多く含まれている脂肪酸の事を言います。
オレイン酸はオリーブオイルに多く含まれており、コレステロールを低下させる効果があります。ただ欠点として過酸化脂質になりやすい点が挙げられます。
オレイン酸は過酸化脂質を作りにくい性質を持っており、血中コレステロールを低下させます。そのため、オリーブオイルは習慣病予防に適した食品と言われています。また、オリーブの原産地の住人は心筋梗塞になる確率が低いという研究結果も出されました。これにより、オリーブの含有物質のオレイン酸が注目されました。
オリーブオイルにはベータカロテンやビタミンE、スクアレンやポリフェノールなども含まれており、酸化しにくいという点から良く調理に使用されます。ただ、身体に良いとはいえ脂肪なので過剰摂取は避け、炒め物やドレッシングなどに利用するのをおすすめします。
全国和牛能力共進会で日本一の栄冠
2017年に宮城県で開催された「全国和牛能力共進会」。この大会で鳥取県から出場した一頭の和牛が快挙を成し遂げます。全国の有名ブランド牛がひしめく中、鳥取県の代表牛「白鵬85の3」が初めて日本一に輝いたのです。
「全国和牛能力共進会」は、5年に1度行われる大会で、和牛界のオリンピックと言われており、日本中から選りすぐりの和牛が一同に介し、厳正な審査が行われ、その年の和牛NO1を決める大会です。
11回目となったこの大会には、全国から過去最多の肉牛183頭と種牛330頭、合計513頭が出品され、鳥取県からは、肉牛8頭と種牛18頭が出品されました。鳥取和牛が日本一を獲得したのは、「花の7区」と呼ばれる肉質を審査する部門で、大会でも一番注目を集める部門でした。
この大会により鳥取和牛「白鵬85の3」の名は全国に知れ渡り、「白鵬85の3」を親とする良質な和牛が生産されるようになりました。
鳥取和牛が肉質で日本一となった第7区とは?
お正月の恒例スポーツに箱根駅伝があります。箱根の2区を走る走者は「花の2区」と呼ばれますよね。花の2区とは10区ある走路の中で一番長く地形も厳しい事から、出場校のエースが走り、そのエース見たさに観客が大勢集まり、一番の声援が送られる注目区ということでその名がつけられました。
「全国和牛能力共進会事」の花の7区も理由は同じで、大会で最も注目される区という事でその名が付きました。自慢の種雄牛から生まれた肉牛と種牛を出品し、各都道府県の改良成果が評価される部門です。鳥取県から出品した「白鵬85の3」を父とする鳥取和牛が、この部門で全国1位を獲得したのです。鳥取県民の努力が見事に結実した瞬間でした。
和牛子牛の平均取引価格で日本一
さらに2020年に子牛市場で競り落とされる仔牛の平均価格が、全国1位という栄誉を手にしました。
それまでは鹿児島県や兵庫県、滋賀県など、名のあるブランド牛が生産される地域の仔牛が高値で取引されていました。ただ近年、鳥取県の飼育農家の努力により、改良が進められた鳥取和牛は、霜降りの度合いなどの産肉能力は全国のトップレベルになり、鳥取和牛の始祖と言われる気高号の血を引く「百合白清2」や「白鵬85の3」の血統である仔牛は特に人気が高くなっています。
2022年の初セリで過去最高値を更新!
そして2022年、仔牛のセリ市場でさらに歴史が塗り替えられます。
鳥取県の中央市場で行われた仔牛のセリ市場で、なんと891万7,700円という価格で競り落とされたのです。これは2年前に記録した最高競り値を、40万円以上も上回るものでした。この仔牛も「白鵬85の3」を父に持つ血統で、その評価の高さを浦津得る結果となったのです。
鳥取和牛を全国に!
今まで鳥取和牛は高級店などで提供されていましたが、その一方で、市場ではなかなか見かける事がありませんでした。
理由の一つとして、ブランド牛としてのPRをそれほどしていなかったという要因があります。日本各地のブランド牛が全国的に有名になっていく要因には、宣伝力もあります。現在では、鳥取和牛を全国の方にも知ってもらいたいと様々な企画を全国に発信しています。
また最近ではPR効果もあり、鳥取和牛のブランドも全国に知られるようになりました。近年では東京を中心に、鳥取和牛専門店も目にするようになってきています。
鳥取和牛の美味しい食べ方
鳥取和牛の特徴として、融点の低い良質な脂があります。そのため焼肉やステーキよりもしゃぶしゃぶがおすすめです。さらに蒸すことによって、素材本来の旨みと香りを引き出してくれる「蒸ししゃぶ」は、鳥取和牛の豊かな風味をより深く味わえる食べ方です。お肉の風味を崩してしまうポン酢よりも、塩やゆず胡椒で食べるのがおすすめです。
また、オレイン酸の含有量が高く脂身の融点が低い「鳥取和牛オレイン55」は冷たい料理でも美味しく食べる事ができます。上品で後味がさっぱりとした肉料理を食べたいという方にはピッタリです。
もし焼肉で「鳥取和牛オレイン55」を食べる時は、焼き過ぎてしまうと良質な脂肪を味わえなくなるので、火加減に注意し、サッと焼く程度で食べると美味しく食べる事ができます。
他にもいろいろと美味しい食べ方はあるので、「鳥取和牛」の特徴を活かした楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
今後、鳥取和牛が目指すもの
近年では日本国内にとどまらず、海外に向けた鳥取和牛の普及PRにも努めています。平成30年にはその足掛かりとして、東南アジアのタイを拠点とし、シンガポールやマカオなどに鳥取和牛に輸出を開始しました。
「鳥取和牛を日本国内だけではなく世界へ」を合言葉に、鳥取県そして鳥取和牛が見つめる先には日本の枠を超えた先の世界を見ています。
まとめ
この記事では、鳥取が誇るブランド牛「鳥取和牛」の特徴や、「鳥取和牛オレイン55」などについて解説してきました。鳥取和牛がどれだけ高品質で、日本の和牛専門家の中でも評価が高いのか良く分かりましたね。
日本には130とも140とも言われるブランド牛が存在します。その中でも、トップに君臨する品質と肉質を持っているのが鳥取和牛なのです。市場では目にすることが少ない鳥取和牛ですが、通販サイトや直売店では購入する事が可能です。
「こんな美味しいお肉があったの?」。そう思ってもらえるブランド牛、それが「鳥取和牛です」。今後日本のみならず世界への普及を目指しているという鳥取和牛には目が離せません。