全国の数あるブランド牛の中でも、最高品質としての呼び声の高い「仙台牛」。その歴史は、昭和初期から始まります。
宮城の地に生まれた、全国屈指のブランド牛「仙台牛」の歴史を紐解いていきましょう。また仙台牛の特徴や、美味しい食べ方についてもご紹介していきます。
仙台牛とは?
東北宮城県が誇るブランド牛で、そのブランドを獲得するために、日本一厳しい基準を設けていることでも知られています。その肉質は、超がつく最高品質と言われており、全国で開催される肉牛の品評会でも、数多くの賞を獲得しています。
仙台牛のルーツは意外にも浅く、昭和初期ころからと言われています。現在の肉質を誇るブランド牛を作り上げるために、県を挙げての取り組みが行われ、飼育農家の並々ならぬ努力があったことも忘れてはなりません。
日本一厳しい基準
仙台牛の定義
最高級品質の証である称号を手にするためには、5つの定義をクリアする必要があります。
- 宮城県内で肥育された肉牛であること
- 協議会が認めた市場や共進会などに出品されるていること
- A5またはB5に評価された牛であること
- 仙台牛生産登録した農家が個体に合った適正な管理を行っていること
- 育ちや出生やがしっかり明確なこと
これらの厳しい定義を課し、霜降りと赤身のバランス、きめの細かさなど厳しい基準をクリアし、最高ランクに格付けされた牛肉だけが「仙台牛」の称号を得ることができます。宮城県では、年間およそ15,000頭が食肉として出荷されていますが、うち仙台牛の名で出荷されるものは、そのおよそ3割です。
この基準に達しなかったものは、仙台黒毛和牛と呼ばれ仙台牛よりも評価は下回りますが、味にほぼ違いはなく、業界でもその肉質に対し称賛の声があがっています。
仙台牛の特徴とは
仙台牛は、口当たりが非常に良く肉質はやわらかで、まろやかで上品な風味と、噛むとジュワっと溢れ出す肉汁が特徴です。程よく入った霜降りと赤身が絶妙なバランスで、年代問わず楽しめるのが仙台牛です。その上質な味わいは、ふるさと宮城の自然によって育まれています。
仙台牛の美味しさの秘密
また仙台牛は、約36ヵ月かけて丹精込めて大事に育てられます。生まれた瞬間から宮城の透き通った空気の中でのびのびと成長していきます。そのため、全ての牛の肉質にぶれが無く、A5ランクという規格をクリアできる美味しい「仙台牛」を育てることができるのです。
仙台牛のふるさと宮城の自然
宮城は国内でも有数の米どころです。仙台牛は、宮城を流れる広瀬川の清らかな水で育ったひとめぼれやササニシキなどの稲わらを贅沢に十分なほど与えられて育ちます。ふるさとの豊かな自然の恵みをからだいっぱいに吸収することで、仙台牛の美味しさは作られています。
上質な霜降りややわらかな肉質、芳醇な香りはそうした自然の中で生まれ育った飼育環境があります。
仙台牛の歴史
仙台牛の歴史は、他のブランド牛よりも浅く、昭和6年に宮城県の畜産試験場が、肉質の向上を図るために兵庫県から種牛を導入し、牛の改良を手掛けたことから始まります。
その後、昭和49年に宮城県内で生産される肉質をより向上させるために、兵庫県から「茂重波号」という優れた種牛を導入しました。茂重波号は、自分の血統の仔牛を4万頭以上も生産し、そのうち枝肉上物率、いわゆる肉質A4・A5ランクの和牛が70%以上という成果を上げることになったのです。
仙台牛の基礎を築いた「茂重波号」
茂重波号は、兵庫県の名牛といわれた「茂金波号」の産子で、その兄弟は百数十頭を数え、 全国各地で種牛として活躍したと言われています。現在出回っている仙台牛のほとんどが、この茂重波号の血統を引いているのです。
もちろん種牛が良いだけではいい牛は育ちません。そこには飼育農家の努力があったわけです。良質の仔牛を量産できたことで、さらなる品質改良のため、肥育方法を試行錯誤した結果、現在の高品質の仙台牛が確立されました。
優れた種牛、茂重波号の存在が、今の仙台牛を生み出したと言っても過言ではありません。宮城県内の和牛の質的改良に大きな貢献を果たし、仙台牛の土台を築いたのが茂重波号なのです。
ちなみに、茂重波号の子供である「茂洋号」は、スーパー種牛と称され、その血統の仔牛の枝肉上物率は、父である茂重波号の70%を大きく超える87%を記録しました。そして現在では、茂洋号の子孫たちが活躍しています。
牛タン誕生の歴史
仙台と言えば「牛タン」と思われる方もいるのではないでしょうか。
牛タンは昭和23年、一人の和食料理人によって誕生しました。それが「佐野啓四郎」です。佐野は洋食店で使われていた牛タンの美味さに感動し、その後試行錯誤を重ねた結果、誕生したのが「牛タン焼き」で、それが仙台牛タンの発祥と言われています。
ただ当時は、牛の舌を食べる習慣はほとんどなく、牛タンの愛好家などが好んで食べる程度で、一般では珍味としての扱いでした。しかし昭和中期、日本が高度経済期に入るころ状況は一変します。全国各地から仙台への出向者や単身赴任者が増え始め、この牛タン焼きを食べ、その味が絶品だと評判になったのです。その仙台赴任者が各都市へ戻り、口コミにより一気に広まりました。当時は仙台の一部でしかその味を知るものはおらず、全国各地から仙台に赴任した者たちは、その味に驚愕したと言われています。
その後、その美味しさはもちろんのこと、脂肪分が少なくヘルシーであると様々なメディアで取り上げられ、全国へと広まっていきました。物珍しさもあり、牛タンを口にする人たちも増え、その美味しさがまた口コミで広がり全国区へとなっていきます。
仙台流の味噌や南蛮で食べる牛タンなども開発され、牛タンと言えば仙台!と誰もが認める宮城の名物になったのです。
日本一に5度も輝いた仙台牛!
仙台牛は年に1度行われる「全国食用牛枝肉共励会」で、全国で唯一、5度の日本一を獲得しているブランド牛です。
この大会は、日本最大の食肉の品評会で、簡単に言えば「日本一の食肉を決める大会」です。和牛生産者の意欲向上や市場の活性化を目的に行われ、全国から優秀な肉牛、それも全てブランド牛を対象としており、約500頭前後が集まり、その品質を競い合う大会です。
昭和58年の日本一を皮切りに、平成6年、13年、28年、29年と日本一に輝いているのが仙台牛なのです。このことからも、仙台中の肉質がどれほど優秀なのかが分かりますね。
仙台牛のおすすめの食べ方
仙台牛のような高品質のお肉になるとその保存方法で味が変わってしまいます。まずはご家庭でもできる美味しく保存する方法をご紹介します。非常に簡単なので是非お試しください。
- 空気に触れないようにする
- 低温で保存しておく
この2つをしっかり守れば、新鮮な仙台牛の味を楽しむことができますので実践してください。
また、解凍方法にもこだわるようにしましょう。解凍は冷蔵庫でゆっくり解凍していくのがベストです。ただどうしても急いで解凍をしたい場合は、電子レンジの解凍機能を使用するか、しっかり密封をし、水道で流水解凍するのがおすすめです。電子レンジでの温め解凍や、お湯を使用した解凍は、品質を損ねてしまうので絶対に避けましょう。
それでは仙台牛のおすすめの食べ方をご紹介していきます。
ステーキ
お肉は常温に戻し、塩コショウをふりかけ、熱したフライパンに牛脂を敷きステーキ肉を置き、一気に焼いていきます。焦げ目がついたらひっくり返しお好みの焼き加減で食べるのがおすすめです。脂の融点が低いので、焼き過ぎは旨みが逃げるので厳禁です。
フライパンに残っている肉汁で、ソースを作って食べるのもいいですよ。しょうゆベースのソースは仙台牛ステーキとの相性もピッタリです。
すき焼き
こちらもお肉は常温に戻していくことが肝心です。すき焼き鍋を熱し、牛脂を敷いて野菜を焼いていきます。その後お肉を入れ割り下を入れます。ポイントはお肉に火が通らないうちに割り下を入れるようにすることです。仙台牛の上質な味を楽しむには、さっと火を通す程度で食べるのがいいですよ。
しゃぶしゃぶ
こちらもお肉は常温に戻しておきましょう。しゃぶしゃぶは、どうしてもお肉の赤身が無くなるまで出汁に通す人が多いです。仙台牛の美味しさを味わうには2〜3回出汁にくぐらせるくらいで丁度良いです。ポン酢やゴマダレにくぐらせるか、お塩につけて食べても美味しいですよ。
焼肉
焼肉も他の食べ方と同様で、焼き過ぎないようにするのがコツです。タレにつけて食べてもいいですが、仙台牛の味を楽しむために、少し違った食べ方をおすすめします。それがお塩とわさびです。その2つは肉のうまみをしっかり感じられる薬味になるので是非試してほしい食べ方です。
まとめ
仙台牛の歴史について解説してきました。昭和初期からその歴史が始まった仙台牛。現在では、日本一厳しい基準を設け、全国のブランド牛の中でも最高位の品質を誇っていますが、そこには県を挙げての和牛の改良や、飼育農家の苦労や努力、そして最高の種牛とうたわれている「茂重波号」の存在があったことを忘れてはいけません。
このような深い歴史を知った上でいただく仙台牛の味は、また違ったものに感じてくるのではないでしょうか。
皆さんも日本最高品質の仙台牛を、是非堪能してみてください。