全国でもその名を知られている米沢牛。400年以上の古い歴史を持ち、日本三大和牛とも言われており、肉質の良さは全国でも屈指と言われています。ただ、厳しい審査を設けて全国に出荷される数は、他のブランド牛と比べても少数なのをご存じでしょうか。
今回は、そんな山形が生んだブランド牛「米沢牛」の特徴や米沢牛の美味しい食べ方、そのルーツについても分かりやすく解説していきたいと思います。
山形が生んだ絶品ブランド牛「米沢牛」
朝日連峰や奥羽山脈などの雄大な山々と、一級河川に数えられる清流最上川。そして、夏は暑く冬は極寒の寒さで、昼夜の寒暖差も激しい地域と言われています。そんな山形の風土でたくましく育てられた米沢牛は、三大和牛の一つに数えられ、日本全国で広く親しまれているブランド牛です。
恵まれた環境と飼育農家の努力によって育った米沢牛ですが、そのブランドを付けるためには厳しい条件を設け、それをクリアした牛のみです。米沢牛銘柄推進協議会が定める厳しい条件は、黒毛和種で未経産の雌牛であること、生後32カ月以上など5つの条件が設けられています。
これらの条件をクリアして初めて米沢牛のブランドを得ることができます。この狭き門は、出荷頭数にも表れており、年間2,000頭ほどしか出荷されません。
米沢牛の特徴とは?
いい品質の牛を育てるために、余計なストレスをかけない肥育環境を徹底しています。ストレスは霜降りの入り方や、肉質にも影響すると言われています。自由に育てられた米沢牛は、きめ細かなキレイに入った霜降りと、上品に香る脂、そして甘みのある赤身が特徴です。
脂は融点が低く、人肌程度の温度で溶けてしまいます。そのため、口に入れた瞬間に脂が溶け出し、柔らかい食感と、上質な脂の香りを楽しむことができます。
安心安全に考慮した管理体制
米沢牛を安心安全に食卓に届けるために、米沢牛の卸売りに携わる団体では品質管理を徹底しています。米沢市銘柄推進協議会は、その安全性を証書にまとめ「米沢牛安全宣言」を宣言しました。
詳しい内容は「米沢牛安全宣言」
(http://www.moumoutei.com/quality_04.pdf)
こちらに記載されていますのでご確認ください。
米沢牛は日本三大ブランド牛!
三大和牛、もしくは日本三大和牛とも呼ばれているブランド牛は、兵庫県の神戸牛、三重県の松阪牛、滋賀県の近江牛もしくは米沢牛と言われています。三大和牛なのに何故4種類なの?と思われる方もいるかもしれませんが、実はどの3銘柄が三大和牛なのかは決まっていないのです。先に挙げた4種類のうち3銘柄を指すのが一般的で、中にはその全てを指し、日本四大和牛と言われることもあります。
全国に150種類存在すると言われるブランド牛は、同じ和牛でも、その味や脂肪の付き方、肉の柔らかさ等が全く異なるため、食べ比べてみると非常に面白いですよ。
神戸牛の特徴とは
日本だけでなく、海外でも高い評価を得ているのが「神戸牛」です。皆さんも神戸牛という名前は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。高級ブランド牛として知られる但馬牛の中から、厳正な厳しい基準をクリアした肉質の上質なものが「神戸牛」です。
2009年には世界三大珍味と言われるトリュフ、キャビア、フォアグラなどの食材とともに、世界で最も高価な食べ物9選にも選出されました。当時アメリカ大統領だったオバマ氏が来日する際に「日本では是非神戸牛を食べてみたい」とリクエストしたことでも知られています。
神戸牛は肉質が非常にやわらかく、上質な甘い脂が特徴で、口の中でとろけるようなふんわりとした食感が味わえます。そんな特徴を持った神戸牛のおすすめの食べ方は「すき焼き」です。神戸牛の肉の甘味とやわらかさをもっとも堪能できる食べ方と言われています。
また、ステーキは、お肉そのものの味を楽しめるのでお塩とコショウだけで楽しむのがおすすめです。薄く切ったお肉をだし汁に数回くぐらせて食べるしゃぶしゃぶも美味しく神戸牛を食べることができます。
松阪牛の特徴とは
こちらも皆さんにはなじみ深いブランド牛だと思います。三重県は和牛の飼育が非常に盛んな地です。そんな三重県で生産される黒毛和牛の中でも、松阪牛は最高品質の牛肉として知られています。
きめ細かい霜降りと、やわらかな肉質と甘み、芳醇な香りがあるのが特徴で、ステーキで食べるなら間違いなく松阪牛とも言われる、肉のうまみが絶品のブランド牛です。ひと口食べただけで、口の中にとろける脂肪の甘み、そして肉本来の味を存分に堪能することできます。
ステーキであれば塩だけで肉本来の風味や味を楽しむのがおすすめです。すき焼きの場合は、後味がスッキリとしているので食べやすく、野菜との相性も抜群です。また、シチューの具材として、脂身の甘さが絶妙でとろける味わいを楽しむこともおすすめです。
近江牛の特徴とは
日本一の面積を誇る琵琶湖のある滋賀県でストレスなく育てられ、約400年の歴史がある日本で最も歴史のあるブランド牛が近江牛です。日本では、牛を食肉にしたのは明治時代以降と言われています。
ただ近江牛は、それよりも前の戦国時代から食べていたと言われており、1580年代に豊臣秀吉が小田原城攻めを行った際、その当時近畿地方を収めていた側近の高山右近が、秀吉方の重臣、蒲生氏郷や細川忠興らに近江の牛肉を振る舞ったという史実も残っています。
近江牛は肉質がとてもきめ細かく、脂肪の甘みがきわ立っているのが特徴です。そのため脂が溶け出す融点も低く、口の中に入れるだけでとろけてしまう触感が味わえます。非常にやわらかいお肉なので、すき焼きやしゃぶしゃぶなど溶けるような食感を楽しむ鍋料理がおすすめです。また、とろけ出した脂と野菜の相性も抜群です。
柔らかい食感で甘みがあるのが特徴なので、ステーキとして食べる場合にはレアで食べるのがおすすめです。定番の塩こしょうはもちろん、醤油ベースのソースやポン酢と大根おろしなども相性抜群ですよ。
米沢牛の歴史
江戸時代が終わりを迎え、まだその傷跡が残っている米沢。そんな騒乱が落ち着き始めた明治初期から米沢牛の歴史は始まります。その足がかりとなったのが、幕末の時代、米沢藩の藩主だった上杉鷹山です。
当時の米沢藩は、戦の処分での減封や自然災害などにより深刻な財政難に陥っていました。その危機を救ったのが、名藩主と言われる上杉鷹山でした。若干17歳で藩主となった上杉鷹山は藩の財政を立て直すため、田を増やし、水路を引き、ため池を作り、農業の基礎を作ります、そしてもう一つ取り組んだのが、特産品づくり。その中心となったのが牛の飼育でした。
当初は食肉用としてではなく、農作業や運搬などの使役用として扱われていました。その牛が、米沢ならではの豊かな自然と栄養にあふれた環境で育まれるうちに、良質な肉牛へと進化を遂げたのです。
上杉鷹山が残した言葉があります。
「なせばなる、なさねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
上杉鷹山が残した功績は、今もなお、引き継がれているのです。
米沢牛を全国に広めたイギリス人
今の山形県を作り上げた、その祖とされる上杉鷹山。様々な取り組みを行った上杉鷹山が、明治時代の初期、米沢藩の藩校として開校したのが「興譲館(現在の米沢興譲館高校)」でした。そして興譲館に招かれ、明治4年から8年までの4年間、教師として教壇に立っていたのが、チャールズ・ヘンリー・ダラス氏です。
それまでの米沢では四つ足の動物は食べないとされていました。ダラス氏が、故郷イギリスの味を懐かしみ、米沢の地で牛肉を食べたのが食用としての米沢牛のはじまりです。これをきっかけに、米沢牛の名が全国へと広がっていくのです。
全国へと広がる米沢牛
米沢牛の美味しさに感動したダラス氏は、興譲館での任期を終えた明治8年、米沢を離れる際に一頭の米沢牛を横浜へと持ち帰ります。横浜の居留地に滞在していた友人たちに、持ち帰った米沢牛をふるまうと、その美味しさに驚嘆の声が上がります。横浜の地でも、その美味しさが話題となったのです。
その後、ダラス氏の紹介で、横浜の問屋と米沢の家畜商が契約することになります。いよいよ全国に向けて、本格的な米沢牛の売り出しが始まります。明治8年には米沢市内に最初の牛肉店が開店し、その後続々と多くの牛肉販売店が開業しました。当時の米沢には、牛肉に馴染み深い関西方面からの商人の往来が目立ち、その商人たちへ米沢牛の「牛鍋」を振る舞う機会が多かったことも影響し、その美味しさが関西への広がり、最終的には全国にその美味しさが広まりました。
山形で行われる米沢牛肉まつり
「米沢牛肉まつり」は山形県米沢市の農業まつりの一環として、米沢牛を美味しく食べてもらおうと1980年からスタートしました。会場に備えられたテーブルに七輪や鍋をのせ、米沢牛をすき焼きでにして味わうことができます。参加費は2人席用で8,000円、4人席用で16,000円となっています。
しかし近年は、残念ながらコロナウイルスの影響により中止されています。そこで代わりに開催しているのが「おうちで牛肉まつり」です。米沢市民に対し、米沢牛消費拡大事業としているもので、前売りチケットが販売され、お値段16,000円で購入されたお客様が対象となります。1頭の米沢牛を生産者・JA・市役所農林課立会いの元、HACCP食肉加工センターで精肉処理が行われ、その残肉を販売しています。残肉と言っても味は抜群です。いい肉つきで価格もお手頃価格になっていますよ。
ただ、肉好きが集まるこのフェスは、毎年県内にとどまらず県外からも大勢の人が集まります。美味しい米沢牛をみんなでわいわい食べるお祭りの開催再開が待ち遠しいですね。こちらの情報は、米沢市のHPで確認できますので、興味のある方は是非チェックしてください。
米沢牛の美味しい食べ方
いろいろな食べ方で楽しむことが出来るのが米沢牛です。米沢牛を美味しく食べるおすすめの方法をご紹介します。
まずはステーキです。米沢牛のような高級肉は、贅沢にステーキで食べてみたいですよね。普通の肉であれば、火をある程度通した方が嚙み切りやすくなりますが、米沢牛はミディアムレアで食べるのがおすすめです。脂の質が良く柔らかい肉質なので、火を通し過ぎてしまうと本来の味を損ねてしまうので厳禁です。
次は焼肉です。焼肉もステーキと同様、火を通しすぎると米沢牛の特徴が損なわれてしまうので、さっと焼いて食べるのが美味しい食べ方になります。お家で焼肉をするときは、低温で焼かず高温でさっと焼いて食べるのがおすすめです。
そしてしゃぶしゃぶです。出汁にサッとくぐらせる程度で十分です。ピンク色に染まった肉をほおばると、口の中でとろけるような美味しさを味わうことができます。ちなみに米沢牛はアクが少し多いお肉です。アク取りの用意が必要になるので準備しておきましょう。
最後のおすすめの食べ方は、置賜風のすき焼きです。山形県の置賜地方に、米沢牛を使った他では味わえないすき焼きがあるのをご存じでしょうか。生産地で誕生したすき焼きなので美味しいですよ。初めて聞く方もいると思いますので簡単に作り方をご紹介します。
①まずは温めたすき焼き鍋に牛脂を溶かします。
②お肉以外の材料を鍋に敷いていきます。
③その上に肉を敷いていきます。
④そこに割り下を加え、蒸気によって肉に火を通していきます。
⑤肉に軽く火が通ったら割り下にくぐらせて、お好みに合わせて溶き卵につけて食べます。
本来は割り下で煮て作りますが、置賜風すき焼きは割り下にくぐらせて食べます。食べたことのない、美味しいすき焼きを楽しめますよ。是非お試しください。
まとめ
米沢牛の特徴について解説してきました。日本人には馴染みの深いブランド牛ですが、海外でも評価されているブランド牛でもあります。厳しい基準をクリアした肉牛のみが米沢牛の称号を与えられるだけあって、肉質は国内最高級だということが分かりました。
ここに至るまでに様々な歴史を持つ米沢牛。古の人々の思いとともに山形の地で育てられてきました。米沢牛は山形が誇るべき特産品です。口に入れた瞬間にとろける脂、柔らかいお肉と上質な脂の香りを是非ご堪能してみてください。