松阪牛って知ってますか?と尋ねられたら、多くの人が「高級なお肉」と答えるのではないでしょうか?その通り!間違っていませんよ!松阪牛は日本三大和牛の一つとされ、今では世界に誇れる「和牛」として名高い肉となりました。今回はそんな松阪牛についてお話しします。
漢字・読み方 どっちが正しい?
松阪牛といえば「松阪」と「松坂」どちらの漢字が正しいの?とか「まつざかうし」なのか「まつざかぎゅう」なのか、なんて話によくなりませんか?で、どっち?と思ったあなた!ここではっきりさせておきましょう!
まず漢字ですが「松阪牛」が正解。
元々、戦前に三重県の松阪を中心とする地域で「伊勢牛」として育てられていたのですが伊勢牛の中でも最も質の良い牛の肉を「松阪牛」と呼びそれを商標とし差別化を図ることで世間に広げようとしたのです。当時の戦略が見事に成功し、今や世界中で知られる事となりました。
続いて読み方ですが「まつざかうし」なのか「まつざかぎゅう」なのか気になりますよね?
残念!これはどちらも不正解です。
え?どちらも違うの?なにが違うの?と思いますよね?実は間違っているのは「うし」か「ぎゅう」か…ではないのです!正解は「まつさかうし」若しくは「まつさかぎゅう」なのです。
ちなみに、生きている時が「うし」で精肉となった時点で「ぎゅう」だ!なんて言われていたりもするようですが、そういった呼び方の変化は本当ではないのです。
呼び方に関しては「まつさかうし」「まつさかぎゅう」これならどちらも正解です!
なお、呼び方、漢字の紛らわしさを悪用して松阪牛ではない肉を「松坂牛」と表記し高額で売るような業者もあるようなので要注意なのですが、今この記事をご覧になっている皆さんなら「松阪」「まつさか」が正しいと覚えて下さったと思いますので騙されることはないですね!
松阪牛の歴史
松阪牛の元となる牛が初めて松阪近郊にやってきたのは江戸時代の事。
農作業に利用するために、兵庫県や和歌山県で育ったメス牛を購入したことが始まりでした。人々と共に農作業を手伝う牛たちは、家族同様に可愛がられ、時と共に牛の数も増えていきました。
そして、時は幕末。
神戸外国人居留地の人々の間で「神戸牛」が注目され高い人気を得ていたことをきっかけに、松阪近郊で飼育されていた牛たちが食肉として買い取られ「神戸牛」とし売られていったのです。「牛追い道中」って聞いたことないですか?
明治時代に、山路徳三郎という人物が、三重県から遥々徒歩で東京まで、数十頭もの牛たちを引き連れ売りに行ったのですが、その様子を「牛追い道中」と呼んでいたそうです。
山路徳三郎は、獣医師でありながら、農家に食肉として牛を育てることを進めていた人物です。牛肉を売ることで大金を得ていた山路徳三郎ですが、獣医師であるからこそ、健康な牛を判別できた為、より美味しい肉となる牛を売ることができたのですね。
そんな山路徳三郎を中心に、松阪の農家たちが肥育技術を向上させることで、松阪牛のベースができたのです。ただ、まだこの頃は「松阪牛」ではなく、旧国名からとり「伊勢牛」と呼ばれていました。
引用:https://www.ushioidochu.com/commit/
大正に入り、誰よりも先に山路徳三郎から肉を仕入れていた精肉店の店主「松田金兵」が、自身の店で扱う牛肉こそ「松阪牛元祖」だと名乗るなど、少しづつ「松阪牛」という名は広がっていきました。そして昭和30年に「伊勢牛」と名乗るのは産地を誤解されてしまうという理由から「松阪牛」として正式に決定されたのです。その後、松阪肉牛協会が設立され、協会の協議にて「上規格以上」と定められたことをメディアが取り上げたことをきっかけに、高級ブランド牛として定着していったのです。
松阪牛の定義とは?
元々の松阪牛の定義は以下の通りでした。
- 黒毛和種であること
- 子牛を産んでいないメス牛であること
- 三重県・中勢地方を中心とする22市町村(松阪市・津市・久居市・伊勢市・一志郡(一志町・白山町・嬉野町・香良洲町・三雲町・美杉村)飯南郡(飯南町・飯高町)多気郡(明和町・多気町・大台町・勢和村・宮川村)渡会郡(大宮町・渡会町・小俣町・御薗村)で肥育されていること。
- 「松阪肉牛生産者の会」の会員が肥育した、松阪牛個体識別管理システムに登録している牛であること。
現在では、上記のような牛の産地には関係なく、システムに登録されていれば「松阪牛」と格付けられるのですが、上記で説明しました定義の条件に値する牛だけが「特産松阪牛」とされ、それ以外の(血筋のみで産地は関係ない)牛たちは、肉質等級が5の場合「金」で肉質等級が4の場合は「銀」に分けられるのです。
オス牛はどうなるの?
ところで、メス牛だけが松阪牛として定義付けられているというのならば、オス牛はどうなるのか気になりませんか?上記定義にある地域で生まれたメス牛も、最初から全てが松阪牛として肉牛として育てられる訳ではなく、健康状態など厳しくチェックされ、まずは乳牛と肉牛に分けられます。
乳牛は、呼び名の通り搾乳の為、肉牛は食べる為に肥育されるわけですが「松阪牛」を名乗ることができないオス牛も、健康状態などチェックされた後に、種馬か肉牛かに分け「肉牛」として選ばれると去勢し育てられ「神戸ビーフ」「近江牛」として、若しくは、一般的な「国産牛肉」として売られるのです。去勢をせず種馬として育ったオス牛は食べられることはありません。ちなみに、オス牛のお肉の質的には、乳牛として歳をとったメス牛と同じくらいなので、決して美味しくないというわけではないですよ!
より良い牛肉を生産するために
松阪牛の他、全国から牛を買い入れ肥育農家で3年ほど肥育することで松阪牛を名乗れるわけですが、この「肥育」というのは「放牧はせず牛舎で穀物を与え育てること」なので、まさに箱入り娘というわけですね。
引用:https://www.ja-mienaka.or.jp/agri/beef/raise/
より良い肉質の牛に育てるためにマッサージを施したり、一部では批判はあるものの、ビールを飲ませたりと、強いこだわりを持って育てられています。ビールを飲ませる?と心配になった方もいらっしゃるかもしれませんが、手当たり次第飲ませているわけではなく、肥育末期に食欲が落ちた牛に飲ませるそうです。人と同じでビールを摂取することにより、食欲が増進されるそうで、獣医学的に優れた肉質に育つと検証されているそうなのでご安心を。
松阪牛特徴
松阪牛の特徴といえば、きめ細やかな霜降り、柔らかい肉質、霜降り黒毛和牛独特の甘い香り、それと、滑らかな舌触りです。松阪牛は、他の和牛に比べ「不飽和脂肪酸」という成分が多く含まれている為、脂肪が溶け出す融点が低く、口に入れるとスッと溶けていくようななんとも言えない食感が生まれるのだそうです。(和牛=融点25.9℃ 松阪牛=融点17.4℃)
松阪牛の最も美味しい食べ方は?
思い切って値段が高いブランド牛を食べるのならば…と、真っ先にシンプルなステーキを思い浮かべる方が少なくないかと思います。良い肉ほど分厚くカットされているのに、歯がいらないのではないかと思うくらい柔らかくジューシーですから、老若男女誰しもが至福のひと時を味わえますよね。個人的にはちょっと意外ではありますが、松阪牛を肥育する農家さんがおすすめする食べ方は「煮込み料理」とのことで、普段、家庭で作られるメニューに使うからこそ違いがわかるということですね。カレーはもちろん、ビーフシチュー、肉じゃが等に使うのが一番となれば、早速作りたくなりますね!
■クックパッド「高級」「牛肉」レシピ■
まとめ
いかがでしたか?高級黒毛和牛「松阪牛」についてお話しさせていただきました。「牛追い道中」という言葉だけはどこかで聞いたことはありましたが、松阪牛に関連していたんですね!
ここ数年、コロナ感染症の影響もあり、多くの人が外食の機会も減ってしまっているかと思います。いつものメニューを作る際に、思い切っていつもよりちょっと奮発して、日本三大和牛である松阪牛のお肉を使い、まるでお店で食べているような、ちょっとした贅沢気分を味わってみてはいかがでしょうか?
近年、輸入された牛肉が安く売られているため、なかなか国産の和牛を購入しない家庭も増えてきています。日本が誇る、安心安全の国産黒毛和牛「松阪牛」
この記事をきっかけに「松阪牛」が、少しでも身近に感じて頂ければ幸いです。