日本三大和牛にも名を連ねる「米沢牛」。その肉質は日本一と評する関係者もいます。そんな米沢牛のブランドを作り上げた生産者の努力は相当なものがありました。
今回はそんな米沢牛の生産者に焦点を当て、肥育環境やこだわりについてご紹介していきます。
米沢牛とは?
朝日連峰や奥羽山脈などの雄大な山々と、一級河川に数えられる清流最上川。そして、夏は暑く冬は極寒の寒さで、昼夜の寒暖差も激しい地域と言われています。そんな山形の風土でたくましく育てられた米沢牛は、三大和牛の一つに数えられ、日本全国で広く親しまれているブランド牛です。
恵まれた環境と飼育農家の努力によって育った米沢牛ですが、そのブランドを付けるためには厳しい条件を設け、それをクリアした牛のみです。米沢牛銘柄推進協議会が定める厳しい条件は、黒毛和種で未経産の雌牛であること、生後32カ月以上など5つの条件が設けられています。
これらの条件をクリアして初めて米沢牛のブランドを得ることができます。この狭き門は、出荷頭数にも表れており、年間2,000頭ほどしか出荷されません。
米沢牛の肉質
脂の質が良く柔らかいのが特徴です。美しいサシや色味が鮮やかで、そのしっとりととろける味のある脂や、やわらかくジューシーな肉質とまろやかな風味は、米沢牛ならではです。肉のきめ細やかさや、香り高く甘い風味の脂身を楽しみたいときにはうってつけのブランド牛です。
米沢牛の味
きめ細やかな霜降り肉で、口に入れるとまろやかに溶けて、脂っぽさは残りません。また、赤身が美味しいと言われる米沢牛ですが、それは一般的な牛肉と比べ脂が溶ける温度が低いため、口に入れると脂がすぐに溶けます。それが赤身と交わることで、柔らかさとうまみを感じられるからです。
米沢牛の生産者をご紹介
米沢牛の生産に尽力している方々をご紹介します。それぞれこだわりを持ち、高品質の米沢牛を誕生させています。
吾妻山麓放牧場
東吾妻山麓の中腹、標高800mの場所にあり、8万ヘクタールの広い敷地内で牛たちはのびのびと育っています。米沢牛の共励会でも優秀な成績を収めるなど、高品質な米沢牛を輩出しています。
環境
広大な敷地内に約3,000頭の牛が飼育されており、冬は3mの雪が積もる厳しい環境の中で育てられています。夏は平均気温16度と牛にとっては過ごしやすい環境で、牛たちにとって最も適した気温です。
牛舎内は清潔に保たれており、リラックスさせるために音楽を聞かせるなど工夫がされています。
飼料
稲わらやトウモロコシ、ふすまや大豆など独自にブレンドした飼料を与えています。また飲み水は、山に溢れる湧水を使用し、ミネラル豊富な水を常に飲める環境を作っています。
基本情報
生産牧場名 | 吾妻山麓放牧場 |
住所 | 〒992-1204 山形県米沢市大小屋1379−2 |
電話番号 | 0238-57-3411 |
取り扱い品種 | 米沢牛黒毛和種 |
受賞歴 | 不明 |
直営店 | 不明 |
公式ホームページURL | https://www.city.yonezawa.yamagata.jp/3239.html |
公式Instagram URL | なし |
公式Twitter URL | なし |
米沢牛いとう牧場
2021年の共励会ではグランプリを獲得するなど、多くの優秀な米沢牛を輩出している「米沢牛いとう牧場」。家族3代にわたり米沢牛の生産に尽力しています。現在は3つの牧場を所有し約100頭の牛を飼育しています。
環境
まわりは田園地帯と山に囲まれており、静かな環境の中で牛の飼育をしています。牛舎は常に清潔に保たれており、一定の室温に保つため、扇風機を設置し稼働させることで空気を循環させています。
飼料
自家栽培した稲わらに、ふすまや加熱発酵させた大豆や米を混ぜた独自の飼料を与えています。飲み水は近くを流れる最上川の伏流水を与えており、いつでも新鮮な水を与えられる環境を作っています。
基本情報
生産牧場名 | 米沢牛いとう牧場株式会社 |
住所 | 〒992-1445山形県米沢市笹野本町6651−1 |
電話番号 | 不明 |
取り扱い品種 | 米沢牛 |
受賞歴 | 不明 |
直営店 | 不明 |
公式ホームページURL | http://bekokai.com/%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/%E7%B1%B3%E6%B2%A2%E7%89%9B%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%86%E7%89%A7%E5%A0%B4%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%81/ |
公式Instagram URL | なし |
黄木畜産
生産から販売まで一貫体制を行っているのが「黄木畜産」です。米沢にある直営店「黄木」では、リーズナブルに良質な米沢牛を購入できると大変人気です。現在は約200頭の肉牛を飼育しており、高品質な米沢牛作りに日夜励んでいます。
環境
1頭1頭に目の行き渡るような管理体制で肥育しており、日課として、牛達の体調チェックを1日4回必ず行い、常に健康状態に気を配っています。また牛のお部屋となるマスの中は、いつでも足を伸ばしてぐっすり眠れるように、籾殻やオガクズをたくさん敷いてあげたり、ブラシで撫でてあげたりし、リラックスできる環境を整えています。
飼料
とうもろこしや大麦、ふすまや米ぬか、大豆粕などを混ぜ独自の配合を行い、米沢産の稲 わらや牧草と共に、常に牛達の体調と栄養バランスを考えて与えています。また飲み水はミネラル豊富な井戸水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | 吾妻山麓放牧場 |
住所 | 〒992-0017山形県米沢市桜木町3-41 |
電話番号 | 0238-22-2241 |
取り扱い品種 | 黄木ブランド牛 |
受賞歴 | 不明 |
直営店 | 不明 |
公式ホームページURL | http://yonezawagyu-o-ki.com/company/ |
公式Instagram URL | なし |
公式Twitter URL | なし |
玉庭放牧場団地
川西町内の5人の農家の方々が、それぞれ繁殖部門と肥育部門に分かれた経営を行っており、約200頭の牛が飼育されています。飼育方法も試行錯誤を繰り返し、より良い方法を作り出しています。それぞれが切磋琢磨しながら、高品質な米沢牛を作り上げています。
環境
広大な丘陵地に、緑が広がる静かな場所に牧場があり、牛の飼育にはうってつけの環境です。約200ヘクタールある牧場内でのびのびと育てられ、ストレスのかからない環境作りをしています。牛舎内も、牛が過ごしやすいように室温を一定の保つため、扇風機などを天井に設置しています。
飼料
主に穀物と稲わらを混ぜたものを与えています。特に牛の体つくりに重要な稲わらは、地元の農家さんから提供された栄養満点のものを与えています。また飲み水は井戸水を使用し、新鮮な水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | 吾妻山麓放牧場 |
住所 | 山形県東置賜郡川西町大字朴沢 |
電話番号 | 0238-48-2507 |
取り扱い品種 | 米沢牛 |
受賞歴 | 不明 |
直営店 | 不明 |
公式ホームページURL | なし |
公式Instagram URL | なし |
公式Twitter URL | なし |
山口畜産
繁殖から肥育までを一貫して行っている「山口畜産」。これまで共励会などでも多くの賞を受賞している、米沢牛生産の第一人者です。牧場内には約3,500頭の牛が飼育され、年に一度、品質向上を目的とした「山口コレクション」と題したコンテストを社内で行い、より良い米沢牛を作るための意識向上にも努めています。
環境
牧場は自然に囲まれており、ストレスのない、ゆったりした木造牛舎で、高い天井の広い牛舎でゆとりをもって育てています。送風機で換気をすることで新鮮な空気を取り入れ、牛が快適に過ごせる環境を整えています。また常に清潔に保つように心がけ、エサ入れや水入れはもちろんですが、牛のお部屋もキレイにしてあげることでリラックスして眠ることができます。
飼料
5段階のステージごとにオーダーメイドで配合した飼料をメーカーに依頼しています。また、市場の動向をチェックし、常に変化する消費者の嗜好に合わせて餌の内容をマイナーチェンジしています。ステージを細分化するだけでなく、投入する量やタイミングも、牛一頭一頭に合わせて担当者が調整し、品質の均一化を図っています。
また飲み水は神室山の伏流水を地下から組み上げています。常に新鮮で綺麗な水を与えることで洗練された肉質を生み出します。
基本情報
生産牧場名 | 山口畜産 |
住所 | 〒999-6101 山形県最上郡最上町大字向町1575-2 |
電話番号 | 0233-43-2023 |
鈴木寿一氏・英行氏
これまで共励会で獲得した賞は多数。米沢牛生産の第一人者と言われるのが鈴木親子です。10数年前に行われた全国和牛共励会で、米沢牛が初めて日本一の栄誉に輝いたのが鈴木寿一さんの育てた牛でした。
常に研究を怠らず、年2回ほど全国から様々な銘柄牛を取り寄せ勉強会を開き、山形県畜産試験場において牛肉の食味成分の分析、研究を続けています。現在は90頭ほどの米沢牛を飼育しており、今後も活躍が期待される生産者さんです。
環境
ゆったりとくつろげる作りになっている牛舎で、牛たちはリラックスして暮らしています。自然に囲まれており、喧騒がなく静かな環境は牛たちにストレスがかからず飼育しやすくなっています。牛舎内は日光が差し込む造りで、清潔に保たれています。
また定期的に運動場にも出し、適度な運動をさせることでストレス発散と、丈夫な身体づくりに励んでいます。
飼料
稲わらを中心に、トウモロコシなどの穀類や、ふすまやビールかす等を混ぜた独自の飼料を与えています。飲み水も近くの山の伏流水を使用しており、ミネラル豊富な水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | リベラルファーム米沢 |
住所 | 〒992-0066 山形県米沢市遠山町1209 |
電話番号 | 不明 |
伊藤精司・稲馬氏
過去何度にもわたってチャンピオン牛や受賞牛を育て上げた、牛作りの名人と言われている伊藤精司さんと息子さんの稲馬酸親子です。米沢の地で9代にわたって和牛の生産牧場を営み、現在は約80頭の肉牛を飼育しています。また数年前からは子牛の繁殖も始め、より一層牛への愛情を込めた飼育を行い、終止一貫した生産体制を整えました。
今ある米沢牛の名声を全国ブランドに広げた功労者の一人と言っても過言ではありません。
環境
水田地帯に囲まれた牧場で、温暖な気候の中で牛たちは育てられています。牛舎もきれいにし、牛にストレスがかからない環境づくりをしています。牛のブラッシングや爪切りなども行うことでリラックスしてもらうことも忘れません。
飼料
稲わらを中心にふすまやサトウキビのかすなどを混ぜた独自に開発したものを与えています。また成長に合わせ、米ぬかや麦を組み合わせ与えるようにしています。水は井戸水を与えているので、飲み水からもミネラルなどの栄養を取り入れることができます。
基本情報
生産牧場名 | じっしょ伊藤 |
住所 | 〒992-1443 山形県米沢市笹野6651 |
電話番号 | 0238-38-5040 |
五十嵐國太郎氏
こちらも共励会でグランプリを獲得するなど、毎年優秀な米沢牛を輩出している五十嵐國太郎さん。米沢牛の生産に携わって35年以上というベテランの生産者さんです。牛には自然体で接するという五十嵐さんは、現在約90頭の牛たちの飼育を行っています。
環境
西置賜郡町の山々に囲まれた、自然豊かな場所に牧場はあります。牛舎の脇には清流が流れ、夏になると気持ちのいい川風が入り込み、牛たちにとってもこの上ない良い環境で生活することができます。牛舎は常に清潔にしており、たまに運動場に出し日光を浴びさせ、ストレス解消させることも忘れません。
飼料
稲わらにトウモロコシや大豆かすなどオーソドックスな飼料を与えています。また牛の飲み水は、牛舎横を流れる清流からミネラル豊富な水を汲み上げ、牛たちに与えています。
基本情報
生産牧場名 | 五十嵐國太郎 |
住所 | 山形県西置賜郡飯豊町 |
電話番号 | 不明 |
白萩屋畜産
父の跡を継ぎ20代からこの仕事に従事し、米沢牛生産者のホープと期待されているのが白萩屋畜産の長岡正芳さんです。若くして共励会でも優秀賞を獲得するなどその頭角を現し、生産技術は素晴らしいと大変評価が高い生産者さんです。肥育を初めて7年が経ち、現在は奥様とお母様と3人で約170頭ほどの牛を飼育しており、米沢牛というトップブランドを引き受ける覚悟を持って仕事に励んでいます。
環境
全国的に見ても最新の牛舎を持ち、初めて見た生産者は全員びっくりすると言います。牛舎特有の臭いが皆無で、おが屑の香りが漂い、牛たちも一頭一頭しっかり手入れを行っています。また牛の寝床は常にきれいに保ち、牛になるべくストレスを与えないようにしています。
飼料
稲わらにトウモロコシや大豆かすなどの穀類を加え、ふすまや米かすなどを加えた独自の飼料を与えています。飲み水は山からの伏流水を牧場にひき、新鮮でミネラル豊富な飲み水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | 白萩屋畜産 |
住所 | 〒999-0602 山形県西置賜郡飯豊町大字萩生775 |
電話番号 | 不明 |
森谷英一氏
この道30年のベテランで、これまで多くの優秀な米沢牛を輩出してきた森谷英一さん。現在は米沢牛振興協議会の会長も努めており、米沢牛の振興にも力を注いでいます。現在は家族3人で約70頭の牛を飼育しています。
環境
まわりは田んぼに囲まれ、その中に森谷さんの牧場があります。とにかく牛にストレスを与えないように心がけており、牛舎はきれいに保たれ室温は一定に保つため、扇風機を回しています。また寝床となるマスの中も、新鮮な藁や土を敷き、寝心地の良い環境を整えています。
飼料
稲わらを中心に与えています。独自の配合ですが中身は企業秘密ということです。飲み水は井戸水を使用し、新鮮な水を常に与えています。
基本情報
生産牧場名 | 森谷英一 |
住所 | 山形県米沢市六郷町 |
電話番号 | 不明 |
高橋畜産 米澤牧場
飼育から販売まで一貫して行っている「高橋畜産」です。米沢牛や山形牛、また山形のブランド豚も生産しています。その中でも米沢牛の生産をしている米澤牧場では、現在100頭の牛を飼育しており、独自の厳しい基準を設け、米沢牛育成のノウハウを積み重ね、より美味な牛肉生産に努めています。
環境
約12,000ヘクタールと広い敷地内で飼育しており、ストレスをかけないように騒音はたてず、静かな環境で生活させています。一頭一頭しっかり体調管理をし、体調が悪そうな牛にはビタミン剤を飲ませるなどし、すぐに対処できるようにしています。
飼料
稲わらにトウモロコシやふすま、米かすやビールかすなどを混ぜた独自の飼料を開発し与えています。また飲み水は、近くの清流から汲み上げた、ミネラル豊富な水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | 米澤牧場 |
住所 | 山形県米沢市 |
電話番号 | 不明 |
安部直宏氏
和牛の生産と稲作の複合生産を行っており、現在は約40頭の牛を飼育しています。年々その品質は向上しており、約15000坪ある敷地内を利用し、のびのびと健康的な米沢牛を育てると評判の生産者さんです。
環境
東北を代表する大自然、東に奥羽山脈、南に吾妻連峰、西は飯豊連峰に囲まれた場所に牧場はあり、静かな環境は余計なストレスをかけないため、牛たちには最高の飼育環境にあります。また牛舎を増築し、広々としたマスの中で牛たちはリラックスして生活しています。清潔に保つため一日4度の清掃は欠かしません。
飼料
自分が育てた稲を使用し、トウモロコシやふすま、大豆カスや米ぬかを多めに入れるなど独自に配合したものを与えています。また飲み水は、吾妻山系から解け出した山々の豊富なミネラルを充分に含む美味しい水を与えています。
基本情報
生産牧場名 | マルヘイ農園 |
住所 | 〒992-0117 山形県米沢市川井2084 |
電話番号 | 0238-28-6903 |
佐藤畜産
生産から販売まで一貫して行っている「佐藤畜産」です。直営店は大人気で、リーズナブルな料金で米沢牛が購入できると大評判です。一般的には28ヵ月ほどで出荷となりますが、佐藤畜産では33ヵ月みっちりと育てあげています。共励会でも肉付きの良い米沢牛だと評判で、多くの賞も獲得しています。
環境
夏はひたすら暑く、冬は雪に閉ざされる置賜盆地の中に牧場があります。まわりは山々に囲まれており静かな場所なので、牛たちはストレスを感じずにすくすくと育ちます。また牛にストレスを与えないよう、育成のためのスペースを広くし、おがくず等の定期的な衛生管理を万全にして育てており、仕上げ肥育は、四畳ほどのスペースに一頭を配置し、おがくずを毎日足して清潔にしたお部屋で過ごさせています。
飼料
独自に開発した企業秘密ですが、成長に合わせて25種類もの餌を配合しています。また飲み水は、米沢に湧き出る吾妻連峰からの伏流水を使用しており、毎日ミネラル豊富な水を飲んでいます。
基本情報
生産牧場名 | 佐藤畜産 |
住所 | 〒992-0115 山形県米沢市大字赤崩平林五21646 |
電話番号 | 0238-38-2780 |
まとめ
米沢牛の生産者についてご紹介してきました。日本三大和牛と言われる高品質のブランド牛を作り続けるのは並大抵の努力では成し遂げられません。
米沢にはそのブランドを守るために、熱い思いを持った若い生産者が誕生しています。そんな後継者が育ちつつある米沢牛生産者によって、そのブランドはこれから先も守り続けられることでしょう。
情熱とプライドを持った米沢牛の生産者たち。その日が途絶えることはありません。