日本三大和牛の筆頭とうたわれている「神戸牛」。世界も認める神戸牛のルーツとは、一体どのようなものなのでしょう。そこには、長い歴史と一人の英国人の存在がありました。
この記事では、神戸牛の歴史や特徴を分かりやすく解説していきます
神戸牛とは?
全国では神戸牛と呼ばれることが多いですが、実際は「神戸ビーフ」「神戸肉」とも言われます。日本三大和牛の一つとして、日本でも世界でも有名なブランド牛として知られています。
神戸牛の称号を手にするためには、三大和牛の中でも一番厳しい審査基準をクリアしなければなりません。こちらも厳しい基準で知られている、同じ兵庫県のブランド牛、但馬牛の中で、さらに厳しい条件をクリアしたものだけを神戸牛と呼びます。つまり神戸牛は但馬牛の中でも、選りすぐりのブランド牛ということなのです。
神戸牛の定義
上記の通り、神戸牛には世界一ともいわれる厳しい基準が設けられています。
・但馬牛であること
・未経産あるいは去勢した牛であること
・認定されている生産者が育てた牛であること
・生まれから生産まで全てが兵庫県であること
・歩留等級がAもしくはB等級
※歩留等級とは一頭の牛から食肉として利用できる割合を数値にしたものでC級まであります。
・肉質等級が4以上
・BMS値がNO6以上
※BMS値とは、赤身に入った霜降りの量です。NO1〜12まであり12が最高です。
・枝肉の総重量が基準内であること
これらの厳しい基準をクリアした但馬牛だけが神戸牛と名乗ることが許されます。
神戸牛の特徴とは
神戸牛は、脂肪が筋肉の中に細かく入っており、これが筋繊維と交差しあって霜降りとなっているのが特徴です。 神戸牛の脂肪は、他のブランド牛と比べ融点が低く、人肌で溶けてしまうほどです。そのため、あっさり食べられ、脂身が苦手な方でもさらっと食べれるお肉です。
その特徴的な細かい霜降りは、牛の血統で決まると言われており、その味は、餌によって決まります。
神戸牛の美味しさの秘密
多岐にわたる基準を設けていることだけでも、その肉質の高さが伺えますが、神戸牛の美味しさを作り上げている要因は他にもあります。
●血統のよさ
牛を食肉として育てるようになってから、様々な研究がすすめられ、神戸牛に入った見事な霜降りは血統によって生み出されている事がわかりました。そのため、その血統は今もなお守り続けています。 芸術品とも言われる霜降りは、この血統が生み出しています。 同じような環境で、血統外の牛を育てても同じようには育たないと言われています。
●こだわりの餌
神戸牛のみならず、他のブランド牛にも言えますが「肉の味は餌で決まる」と言われます。そのため各地域で餌へのこだわりは持っています。
但馬地方は良質な草と、季節に合わせて変化に富んだ牧草に恵まれています。水は硬水でラジウムが多く含まれており、また但馬の山には、肉牛が育つのに必要な薬草が多く含まれています。動物質性飼料は一切使用せず、大麦やふすまなど、大自然の中にあるものを牛の成長過程に合わせて与えていきます。
熟練した飼育農家だから出来る心配りと経験は、上質な神戸牛を作り上げるためには必要なものなのです。
・芸術的な霜降り
霜降りとは、筋肉の中に入った脂肪が、筋の繊維と混ざり合ったものを言います。熱を加えることで、脂肪が溶け出し、それが口当たりや舌触りとなります。神戸牛の脂肪は融点が低いため、日に通さなくても、体温で溶けてしまうと言われています。そのため、口に入れた瞬間に脂肪が溶け出し、口当たりがまろやかで、芳醇な香りさへも感じることができるのです。
神戸牛の歴史
今では神戸牛と呼ばれるのは当たり前ですが、もともと神戸牛という牛は存在せず神戸肉と呼ばれていました。その神戸肉と呼ばれている牛が但馬牛です。
そもそも以前は神戸牛と但馬牛の違いは曖昧でした。さらに、偽物も市場に出回ることもあり、本物と偽物を区別するために昭和58年に「但馬牛および神戸肉、神戸ビーフの規約」を定めることになります。
これにより、但馬牛の中でも更に厳しい基準をクリアしたものだけが神戸牛として認められることになります。つまり、但馬牛が枝肉となって初めて神戸牛かどうかがわかるわけです。
神戸牛とは、厳しい基準を満たした但馬牛に与えられる名誉ある称号なのです。
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神戸牛誕生に一人の英国人
神戸牛の歴史は古く、但馬牛のルーツである奈良時代と言われてます。ただその頃の文化は肉食を禁じている時代であったため、神戸牛が表舞台に登場するのはもっと後の話になります。
きっかけとなったのは今から150年前。神戸港が開港された慶応3年になります。このころには日本の食文化も変化が訪れていましたが、まだ肉を食すという文化は浸透していませんでした。開港した神戸国は、多くの外国船が来航し、多くの外国人が神戸の街に降り立ちます。外国ではすでに食肉の文化が根付いていたため、神戸の街でも食肉を探し求めますが、食肉の文化がない日本では、もちろん手に入れることができす、食べたいが食べれないという状況が続いていたのです。そこに一人のイギリス人が現れます。それが「エドワード・チャールズ・キルビー」です。
イギリスの実業家だったエドワードは、神戸の一角で外国人向けの牛肉販売を開始したのです。すると、提供する神戸の牛が美味しいと外国人の間で話題となり、日本人の間でも少しづつ食肉の文化が浸透していきます。明治時代に入ると、外国文化が日本でも完全に浸透し、牛肉を食べることが流行となり、日本人ならではの食べ方も広まっていきます。そのはじまりがすき焼き店でした。その数は一気に膨れ上がり、神戸を中心に全国へと一気に広まっていきます。
もともとは一人のイギリス人から始まった牛肉の販売でしたが、その後も日本人の手により様々な牛肉販売店や料理店が開店し、明治8年には、牛肉の生産から加工、販売までの行程全てを日本人の手によって行われるようになったのです。
神戸牛の誕生は、神戸に降り立ったイギリス人実業家「エドワード・チャールズ・キルビー」がいたからこそなのです。
神戸牛としてのブランド化
神戸牛の歴史は非常に古いですが、ブランド化されたのは昭和58年と決して古くありません。但馬牛との区別化を図るためにこの年に設定された審査基準によってブランド化されることとなります。
現在では世界でも知られるブランド牛としてその名を馳せている神戸牛ですが、誕生するまでには、時代の流れと文化の変化が大きく関わっていたのです。
国際的に人気の神戸牛
世界一厳しい審査基準を設け、それをクリアしたブランド牛ということで、もちろん海外でも知名度が高く、特にアメリカやヨーロッパを中心に牛肉の最高峰として「KOBE BEEF」の名で親しまれています。ヨーロッパでは、「神戸牛=美味しい肉」と認識され、KOBEの名を使用した偽物の牛肉まで流通してしまう事態も起こっています。ヨーロッパでは「KOBE」は地名ではなく、牛肉の品種だと誤解している人がいるんです。
また2009年、神戸牛はアメリカのメディアで「世界で最も高価な9種類の食べ物」に選出されるなど、世界的にも認められているブランド牛なのです。
このようなことからも、神戸牛は確かな伝統と歴史があり、世界一と言われる厳しい審査にクリアしているという点から、名牛と言われる牛肉の中でも、その品質においては群を抜いているとされています。
日本のお墨付きがついたGI商品
2015年、神戸牛は但馬牛とともに、日本の肉牛の中で唯一、GI商品としての国家認証を受けました。GI商品とは、品質や評価などに基づき、産地と商品がその地域と結びついているとして、国からその名称を保護される制度です。
これは2015年に設定されて以来、神戸牛のみが与えられており、海外に出しても日本が認めている商品としてお墨付きを得ている証拠となるものなのです。
神戸牛のおすすめの食べ方
神戸牛は上質なお肉なので、どのような食べ方でも美味しいと言われています。今回はその中で、古い歴史を持つすき焼きとステーキのおすすめの食べ方をご紹介します。
すき焼き
まずお肉は常温に戻しておきましょう。すき焼き鍋を熱し、牛脂を敷いて水気の少ない野菜を焼いていきます。その後お肉と残りの野菜を入れ、お肉に火が通らないうちに割り下を入れましょう。神戸牛の上質な味を楽しむには、さっと火を通す程度で食べるのがいいですよ。
ステーキ
こちらもお肉は常温に戻し、塩とコショウをふりかけ、熱したフライパンに牛脂を敷きステーキ肉を置き、一気に焼いていきます。焦げ目がついたらひっくり返し、レアもしくはミディアムレアで食べるのがおすすめです。脂の融点が低いので、焼き過ぎは旨みが逃げるので注意しましょう。
神戸発祥・鉄板焼き
今では世界的にも有名な、目の前でお肉を焼いてくれる「鉄板焼き」ですが、その発祥が神戸なのをご存じでしょうか。神戸の鉄板焼き店「みその」がその発祥と言われており、神戸と言えば鉄板焼きともいわれる有名な食べ方です。
もし神戸にお立ち寄りの際は、本場の鉄板焼きを楽しむのもおすすめですよ。
まとめ
神戸牛の歴史についてご紹介してきました。長い歴史はありますが、世に知られるようになった要因に、一人の英国人がいたことは覚えておきたいですね。
神戸牛のルーツは但馬牛であり、但馬牛の素晴らしい品質があるからこそ、最高品質の神戸牛が生まれているわけです。
日本、そして世界が認める神戸牛は、今後もその名を轟かせていくことでしょう。皆さんも是非ご賞味ください。